継承語(Heritage Language)とは?

継承語は第二の母語と言い換えることができるかもしれません。

異言語環境で言語形成期を過ごす子供の言葉は、母語と外国語に分けることは難しく、

むしろ「継承語」と「現地語」という概念でくくるべきです。

 


  「継承語」 : 親から受け継いだ言葉  

   

 「現地語」 : 子供の育つ環境で毎日使う言葉 


 

国際結婚の家庭では、父親の母語と母親の母語という複数の継承語を持つ場合もあります。

継承語教育の教育的意義

 

継承語教育は対象となる言語が親の言葉であるために、継承語が生活上の機能を失ってもそれを伝承すべきであるという責任感は何世代も続きます。


また、特に親が現地語に堪能でない場合には、親子のコミュニケーションとして必要不可欠な言葉です。つまり、子供の情緒安定、アイデンティティの形成に深くかかわる言語教育として教育的意義は非常に大きいといえます。

 

継承語教育 : 国語教育・外国語教育とのちがい

 

国語の習得


 家庭・学校・社会の中で言葉のシャワーを浴びながら絶え間なく習得します。

 

  •   基本文型は幼児期から学齢期に習得
  •   場面に応じた言語の使用は家庭・社会で習得
  •   読み書き・読解・成人としての言語力の育成は学校で習得

 

外国語の習得


 学習開始時にゼロから出発し習得します。


  •   発音・文法・語彙・文化までを系統的に教室で学習
  •   自然習得の機会は限定

継承語教育の目的

  • 両親、親戚とのコミュニケーションをすみやかにするため。
  • 自らのヘリテッジに誇りをもつため。
  • ヘリテッジ文化を保持、活性化するため。
  • これからの国際社会において、異なる文化の橋渡し的役割をもつため。

継承語教育の課題

 

 マイナスの価値付け:


 継承語 としての言語の社会的認知度によって、その価値付けは異なります。

例えば、英語が継承語である場合、その継承はさほど困難ではないと思われますが、逆に英語が現地語である場合には、継承語は常に弱者に立たされるため、主要言語との社会的 格差が大きいほど、学習者が継承語に対してマイナスの価値付けをします。学習者がいかに学習の価値を見出せるようにするかというのが継承教育の課題です。

  

 親のチョイス:


 継承語は親が子供に習わせたい言葉であり、親のチョイスで始まります。

子供にとっては押し付けられた学習であることが多く、学習意欲のない子供にどう前向きの姿勢で取り組ませるかが課題で、実際の授業では、教える側の技能や工夫が必要になります。

 

 アンバランスな語学力:


 家庭使用をベースとする継承語は、対話面(聞く・話す力)は何とか発達しても、認知力を必要とする言語面(読み・書きの力)の発達は遅れます。語学力のアンバランスをどうバランスの取れたものにしていくかが課題です。

継承語教育実践上の問題

学習者の問題:


 継承学習に対する態度が消極的であることの裏には、継承語に対する自信のなさが

ひとつの原因でもあります。家庭での受身的な使用が慣用化され、わからなくても聞き流す習慣がついているため発話が困難になってきます。また、家庭言語が方言である場合、自分が話す継承語が世間一般で通用しないという危惧があります。そして、家庭では使われない敬語の使用も困難です。

 

教授法:

 

 継承語教育では、学習者の年齢差に加えて家庭での使用度が異なるのため、語学力がまちまちです。しかも、言語背景が異なる子供を一つのクラスで一人の教員が教える場合、多様性に対処した教授法、また教材が必要です。